ローズマリーにもすがる

Feb 15. 2026

鏡を見て、ふと手が止まる瞬間がある。

「あれ、ここ、こんなに見えてたっけ?」

髪が細くなり、妙な癖が出てきた。どう好意的に解釈しても、これは「薄毛」の進行だ。40代も半ばにかかれば自然なことかもしれないが、認めたくない自分がいる。

記憶を遡る。そういえば、今の家を建てたときだ。
階段やポストのコンクリートを自ら「ビシャン加工」したあの夏。飛び散るコンクリートの粉塵で、髪がギチギチになったあの感触。

「あれが毛穴を殺したんじゃないか…?」

なんて、ビシャン加工に罪を擦り付けてみたりするけれど、現実は無情に頭皮を広げている。

「禿げたら潔く坊主にすればいい」

そう思っていた時期もあった。しかし、私の頭の形は致命的に「絶壁」なのだ。
丸刈りが似合う骨格ならまだしも、絶壁の坊主ほど哀愁漂うものはない。できれば、髪にはもう少し粘ってほしい。

世の中にはAGA治療薬などの科学的な解決策もある。しかし、友人たちの証言がどうも引っかかる。

「全身が毛深くなった」「精力が減退した」

そしてネットで見かけた「おっぱいが出てくることもある」というパワーワード。男性としてのアイデンティティと引き換えに髪を得るのか? そのトレードオフは、ちょっと無理。

直接塗布するタイプの育毛剤も試してみたが頭が痒くなったし、なんかフケも出てきたような気もしたのでサクッとやめた。

結局、ひたすら頭皮マッサージをするぐらいしか、残された策はなかったのだった。

そんな時、ポッドキャストからふと入った情報があった。

「ローズマリーが髪に良いらしい」

ローズマリー?
うちの庭には馬鹿みたいに生えているじゃないか?

ちょっと高台にあるわが家から小さい子どもが落ちないように生垣風に植えたもの。現在、生命力が有り余ってうねるように生えているあのハーブが、まさか私の頭皮を救うかもしれないなんて。

調べてみると、ローズマリーをウォッカに漬け込んで作る「チンキ(Tincture)」が良いという。作り方は拍子抜けするほど簡単だ。

1. 庭のローズマリーを摘む(剪定ついでに大量に採れる)。

2. 洗って乾かす。

3. ウォッカに2週間ほど漬け込む。

4. 使うときは10倍くらいに精製水で薄める。

これだけ。
血行促進作用や抗酸化作用があるらしく、古くから「若返りのハーブ」として重宝されてきたという。自然の力は侮れない。

簡単だったし、藁(ローズマリー)にもすがる思いで作ってみた。ウォッカに沈むローズマリーは見た目にも美しい。これならちょっとおしゃれだし、まさか育毛剤とは思われないだろう。

実際に使ってみると、まず香りが良い。
爽やかで、少しスパイシーなローズマリーの香りが広がる。これ、育毛効果以前に「加齢臭対策」としても優秀なんじゃないか?

市販の育毛剤のような、いかにもな匂いもしないし、何より「自分の庭で育ったもの」と「ウォッカ」だけでできているという事実が、心理的安全性を高めてくれる。体に悪いわけがない。

効果?
まあ、使い始めたばかりですぐにフサフサになるわけもない。
でも、頭皮にシュッと吹きかけてマッサージする時間は、以前のような「焦り」の時間ではなく、少し優雅な「ケア」の時間に変わった気がする。

もしこれで本当に効果が出たら、同世代のハゲ仲間に配ってあげようと思う。