高山活版社「とりあえずやってみるよ」と言える職人がいる強さ

Sep 6. 2023

先日、機会があって大分の高山活版さんの工場見学させてもらいました。
高山活版社は1910年創業と歴史は古く、活版印刷からはじまった会社。
時代の流れと共に効率の悪い活版印刷業からは撤退し、オフセット印刷にシフトしたそうです。しかし、2014年に中古の活版印刷機を市場で見かけたことをキッカケに再び活版印刷業を再開。

情報伝達はデジタル上で完結してしまうこの時代に、敢えて紙に印刷する意義を模索しているとのこと。

その模索の中心にいる方で、職人でもあり、営業でもあり、なんならイノベーター的でもある方のひと言ひと言が重く染み渡るのなんのって。。。ということでお話の一部をご紹介。

「機械は古いし、機械だけではできることは少ない。でも手を動かして頭使えばやれないことない。最初からできないなんて言いたくない。とりあえず、やってみるよ。」

写真に載せたのは自社ブランド“TAKAYAMA LETTERPRESS”のノート。
活版の文字間がどうもしっくりこなかったとのことで一文字一文字の隙間に、厚みが1mmもないケント紙を挟んで何度も調整したらしい…

さらにノートの綴じ方にも別の方のこだわりが。
『昔の本がよく開くのはなぜだろう』からスタートし、その本を分解して、綴じ方(縫い付け方)を研究。
ノートなのに手縫いで綴じているそうです。。。
そして「最近は15分で1冊作れますよ!」と平然と言ってました笑

途方もない試行錯誤の上で完成したノートは一見なんの変哲もないノート。
価格は¥2,200とただのノートと比較すると10倍ぐらいの価格。でも、この工程を知ると値段は気にならなくなる。なんなら何に使おうかということさえ、どうでも良くなってきて、ただただ欲しいと思えてくる。

ペーパーレス化が進み、視覚的な情報の伝達には「印刷物」は不要になっていくでしょう。
それでもこういったノートが欲しくなるというこの感情こそ大事にしなければならない。そこには視覚だけでは伝わらない別の何かの伝達が生まれているのだから。